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なぜ「あの人」は反対意見を受け付けないのか。ネットとSNSの時代に告ぐ

インターネットとSNSはポピュリズムを加速させるだけなのか?

■インターネット時代に求められる「変化」

 では、インターネットとSNSは民主主義の前提を破壊するだけなのかといえば、そうではない。季節の変化に合わせて着るものを変えるように、人間は環境の変化に合わせて社会の在り方や自己を変化させていくことができる知性を持っている。インターネットやSNSによって情報を取得する環境が変化したのであれば、その環境に合わせた変化をしていけば良い。
 マイノリティの人たちは、今まで離れ離れにひっそりと暮らしていたことが多かったが、インターネットを通して同じ境遇にある離れた場所の人と出会い、繋がることができる。そういった人たちがインターネットを通してコミュニティを作れば、それまでは自分のマイノリティとしてのアイデンティティに自信を持ちきれなかった人でも、同じ境遇の人のより強い意見に触れることによって、自身のアイデンティティに確信を持てるようになるだろう。そして、今までの環境では埋もれがちだった意見を、大きな声であげられるようになる。だから、インターネットを通して同じ価値観の人が集まる集団が形成されることは、時と場合によっては利点ともなるのではないだろうか。
 インターネットは多様な情報に容易に接する機会を提供し得る。たしかに、「オススメ」機能は便利ではあるが、たとえばこれを似たようなものばかりではなく、敢えて全く違うものや反対のものをシャッフルして提案するシステムも組み込むことで、異質なものとの偶然の出会いの機会を従来のメディアよりも多く提供できるようになるのではないか。
 異質なものとの出会いの機会が増え、インターネットやSNSを利用する多くの人々が異なる意見への柔軟な態度を備えるようになれば、ネット上で形成されていく世論も、短絡的でポピュリズム的なものではなく、しっかりと議論が重ねられた民主主義的なものになっていくだろう。もちろん、それまでの道は長く、かなり難易度は高いが、工夫次第では不可能ではない。

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大賀 祐樹

おおが ゆうき

1980年生まれ。博士(学術)。専門は思想史。

著書に『リチャード・ローティ 1931-2007 リベラル・アイロニストの思想』(藤原書店)、『希望の思想 プラグマティズム入門』 (筑摩選書) がある。


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